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Yuuto Village Minami-nagasaki

ユウトヴィレッジ南長崎



1972年築の木賃アパートのシェアハウスへのリノベーションである。

築年数が経つにつれ、昔ながらのアパートには借り手がつかなくなり、最後は大家であった高齢の女性が一人暮らしをしていた。その彼女もいよいよ娘夫婦と同居することとなる。そのまま行けば放置され危険な空き家になったかもしれない。

ここで最後の住人である老女の孫が声を上げる。彼は大好きな祖父が生前この家に色々と手をかけ、言うなればかわいがってきた様子をよく覚えていた。そんな家がほったらかしにされそうになっていることを知り、その活用法を探るためまず住ませてほしいと家族に願い出た。

友人を泊めてみたり、パーティーをしてみたりするうちに、「住まい」という暮らしの舞台でありながら、人が集まって何かをつくったり表現したりする場所にしたいと思い、「みんなでつくるシェアハウス」が構想された。

私が関わりだしたのはこの後である。オーナーの語る夢をひとつひとつ図面に落としこんでいった。ある程度まとまったところで、「みんなでつくるシェアハウス」のコンセプトに共感し、着工前に入居を決心してくれた住人たちにもヒアリングを行い、プランを修正した。ショールームに行ってフローリングや水回り機器の選定にも参加してもらった。それと平行して、住人や友人たちと壁や天井など解体作業を始めた。間仕切りが無くなり、天井が高くなり、完成後の空間のイメージが共有された。

その後の大半の工事はプロに任せているが、壁の漆喰塗りやフローリング張りも「みんなで」おこなった。

工事中にDIYイベントを行ったりして関わる人が多いプロジェクトであったが、全体を通して不動産コンサルタントの藤木氏が関わり、設計者とはまた違ったプロの視点でのアイデア出しと細かなチェック、問題解決が提示され、プロジェクトマネージャーのような役割であらゆる場面で関係者を取りまとめてくれたことで、このような複雑なプロジェクトが円滑に進んだと思う。

完成後はオーナーの予想を遥かに超える程、近所の人々がよく集まっている。オーナーの社交性や人柄もさることながら、この建物の広いリビングがさまざまな活動を喚起させているのかもしれない。生花教室、書道教室などを定期的に行うようになり、シェアハウスの住人や近所の人で盛況である。

1階の一室はゲストルームになっている。


カラフルな板が張られたバーカウンターはオーナーの手作り。


トイレはオーナーの旅の思い出で飾られている。


SUNIHA UNIHA 吉田美帆さんデザインのアプローチ。このデッキや木塀も「みんなで」つくった。


竣工直後のリビングの様子。ギターや書が飾られ、最初の写真のようになっている。


2階の一室。天井を落とし、断熱をしてベニヤ張りとした。(本ページすべて撮影/ユウト)